◉ 明治から昭和初期にかけて活躍した物理学者、寺田寅彦が残した「科学と文学の驚くべき融合」の全貌、『寺田寅彦全集 文學編』全十六巻の紹介です。随筆、俳諧、未完原稿、ローマ字文、日記、手帳、書簡などを網羅、OCRでテキスト化されていて、新字新仮名でも全文検索に対応。該当項目をクリックすると、スキャンデータの「コマ」に飛んで検索文字に矢印アイコンが現れます。PCでの閲覧がお勧めです。
類い稀なる探求心が醸し出す学風、理系人材を惹きつけてやまない人柄。文理融合の人、寺田寅彦の全集/文学編全十六巻です。
目次
- 1. はじめに
- 2 国立国会図書館(NDL)個人送信サービスから
- 2-1 『寺田寅彦全集 文學編 第一巻』
- 2-2 『寺田寅彦全集 文學編 第二巻』
- 2-3 『寺田寅彦全集 文學編 第三巻』
- 2-4 『寺田寅彦全集 文學編 第四巻』
- 2-5 『寺田寅彦全集 文學編 第五巻』
- 2-6 『寺田寅彦全集 文學編 第六巻』
- 2-7 『寺田寅彦全集 文學編 第七巻』
- 2-8 『寺田寅彦全集 文學編 第八巻』
- 2-9 『寺田寅彦全集 文學編 第九巻』
- 2-10 『寺田寅彦全集 文學編 第十巻』
- 2-11 『寺田寅彦全集 文學編 第十一巻』
- 2-12 『寺田寅彦全集 文學編 第十二巻』
- 2-13 『寺田寅彦全集 文學編 第十三巻』
- 2-14 『寺田寅彦全集 文學編 第十四巻』
- 2-15 『寺田寅彦全集 文學編 第十五巻』
- 2-16 『寺田寅彦全集 文學編 第十六巻』
- 3.書斎の本棚/図書館の書棚から
1. はじめに
寺田寅彦(1878-1935;明治11-昭和10)は明治から昭和初期にかけて活躍した物理学者で、「天災は忘れられたる頃来る」という言葉で知られています。
地球物理学者と思われがちですが、X線結晶解析でノーベル賞に迫る業績を残しただけでなく、夏目漱石門下の高弟として、科学と文学・芸術を融合させた科学観をもち、その独特の研究スタイルは「寺田物理学」と呼ばれて、多くの弟子に引き継がれています。学生時代から夏目漱石に師事、牛頓、薮柑子、吉村冬彦などのペンネームで随筆や俳諧など、多くの文学作品を残しました。寺田寅彦については、当サイトに関連記事があります。また、寺田寅彦の門下生で、原子物理学、量子力学、情報理論、科学的認識論の分野で活躍した渡辺慧に関する記事があります。
≫当サイトの関連記事 : NDL理系書通信 第3報「寺田寅彦」へ
≫当サイトの関連記事 : 書評記事 第1話 渡辺慧『生命と自由』へ
1-1 『寺田寅彦全集 文學編』全16巻
▼ 『寺田寅彦全集 文學編』、岩波書店(1936-8;昭和11-3)、安倍能成、小宮豐隆、松根東洋城、矢島祐利編
寺田寅彦の全集は、岩波書店が戦前に出版した『寺田寅彦全集 文學編』全16巻、『寺田寅彦全集 科學編』全6巻をNDL個人送信サービスで閲覧できます。戦前に出版された旧字旧仮名遣いの全集です。この全集、その後も改訂、再版が繰り返されていて、新しいものでは『寺田寅彦全集』全30巻(1996-9、岩波書店)というものがあるようです。『寺田寅彦全集 科學編』は、当サイトの『全集』探訪 No.2 「寺田寅彦全集 科學編」をご覧ください。
≫当サイトの関連記事 : 『全集』探訪 No.2 「寺田寅彦全集 科學編」へ
1-2 『吾が輩は猫である』の水島寒月と『三四郎』
今回紹介する全集の編集者、安倍能成、小宮豐隆、松根東洋城、矢島祐利のうち、二人目の小宮豐隆は、寺田の随筆では「小宮君」として登場する人物で、寺田と同じく夏目漱石の門下生、のちに漱石全集や寅彦全集の編纂に尽力したドイツ文学者です。寺田は、随筆を書き始めた大正九年当初から、寺田は原稿を小宮にチェックしてもらっています。永井荷風の井上精一のような存在でしょうか。寺田は漱石『吾輩は猫である』の水島寒月、一方の小宮は『三四郎』の主人公のモデルといわれています。水島寒月はご存知、『猫』の重要人物。小林惟司『寺田寅彦の生涯』では、寺田が『猫』に愛着をもつ理由を、“苦しんで書かれた後期の作品と違い、漱石先生が楽しんで書いている”、と述べた上で、
漱石の「猫」には若き日の寅彦が赤裸々に出ていて、寅彦も、その思い出をなつかしむ気持ちになるわけだろう。森貞子やその息子森博芳も「猫」の寒月が即寅彦といっていいほど寅彦に生き写しだと筆者に話したことがある。(小林惟司『寺田寅彦の生涯』、p.185より)
という思い出を語ります(貞子は寅彦の長女)。寅彦は漱石の高弟のなかでも扱いが違うようです。なお、『三四郎』に登場する科学者の野々宮宗八は、寺田がモデルとはいえ、大分脚色がほどこされているという評価です。小林惟司『寺田寅彦の生涯』については、当サイト『理系書探訪』内に関連記事 『全集』探訪 No.2 「寺田寅彦全集 科學編」、3-1 があります。
さて、『寺田寅彦全集 文學編』の全体の構成を示しておきましょう。
第一巻
随筆(明治三十二年から大正十年七月)
第二巻
随筆(大正十年七月から昭和三年十一月)
第三巻
随筆(昭和四年一月から昭和七年十二月)
第四巻
随筆(昭和八年一月から昭和九年六月)
第五巻
随筆(昭和九年七月から昭和十年十一月)
第六巻
短章、斷片その他
第七巻
俳諧、俳諧論、漢詩、新體詩、和歌、歌論
第八巻
科學雜纂(講演筆記を含む)
第九巻
未完の原稿『物理学序説』と翻訳書
第十巻
ローマ字文
第十一巻
日記(明治三十二年から大正六年)
第十二巻
日記(大正七年以後)
第十三巻
平常懐中して使用していた手帳の大部分
第十四巻
書簡(昭和三年まで)
第十五巻
書簡(昭和四年以降)
第十六巻
書籍批評、序文、推薦、應問、雜、雜記帳、スケッチブック、斷片、作文、雲の話、日本文學の諸斷片、講演及談話、第七巻と第十五巻の補遺、年譜、總目禄
2 国立国会図書館(NDL)個人送信サービスから
このコーナーでは、国立国会図書館(NDL)デジタルコレクションの個人送信サービス(無料)を利用して、手元端末で閲覧可能な書籍を紹介します。下の各記事のバナー「国立国会図書館デジタルコレクション」からログイン画面に入ります。未登録の場合、そこから「個人の登録利用者」の本登録(国内限定)に進むことができます。詳細は当webサイト『理系書探訪』の記事「国立国会図書館の個人向けデジタル化資料送信サービスについて」をご覧下さい。
2-1 『寺田寅彦全集 文學編 第一巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第一巻』、岩波書店(1936;昭和11年9月)、pp.628+10
明治三十二年から大正十年七月までの随筆を未発表作品を含めて発表年代順に収録しています。
根岸庵を訪ふ記/東上記/半日ある記/星/祭/車/窮理日記/鴫つき/高知がへり/凩/雪ちやん/團栗/龍舌蘭/嵐/森の繪/枯菊の影/やもり物語/障子の落書/伊太利人/花物語/まじよりか皿/先生への通信/物理學の應用に就て/方則に就て/知と疑/物質とエネルギー/科學上に於ける權威の價値と弊害/科學者と藝術家/自然現象の豫報/時の觀念とエントロピー並にプロバビリティ/物理學と感覺/瀨戶内海の潮と潮流/物理學實驗の敎授に就て/夏の小半日/津田靑楓君の畫と南畫の藝術的價値/硏究的態度の養成/戰爭と氣象學/蛙の鳴聲/科學上の骨董趣味と溫故知新/病中記/病院の夜明けの物音/病室の花/電車と風呂/丸善と三越/自畫像/小さな出來事/鸚鵡のイズム/帝展を見ざるの記/淺草紙/芝刈/球根/春寒/文學の中の科學的要素/凍雨と雨水/漫畫と科學/旅日記から/厄年とetc./春六題/簑蟲と蜘蛛/蜂が團子をこしらへる話/田園雜感/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第一巻』、岩波書店(1936;昭和11年9月)
2-2 『寺田寅彦全集 文學編 第二巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第二巻』、岩波書店(1937;昭和12年3月)、pp.616+7
大正十年七月から昭和三年十一月までの随筆を発表年代順に収録しています。
アインシュタインの敎育觀/アインシュタイン/鼠と猫/或る日の經驗/寫生紀行/笑/案内者/斷水の日/夢/マルコポロから/蓄音機/亮の追憶/一つの思考實驗/茶碗の湯/塵埃と光/斷片(I)/神田を散步して/海陸風と夕凪/秋の歌/電車の混雜に就て/異鄕/相對性原理側面觀/雜記(I)/子猫/浮世繪の曲線/言語と道具/或る幻想曲の序/廿四年前/石油ラムプ/解かれた象/雜記(II)/地震雜感/鑢屑/流言蜚語/二科會展覽會雜感/池/議會の印象/中村彝氏の追憶/二科會其他/路傍の草/書簡(I)/斷片(II)/備忘錄/怪異考/昭和二年の二科會と美術院/人の言葉―自分の言葉/日本樂器の名稱/土佐の地名/比較言語學に於ける統計的硏究法の可能性に就て/「藪柑子集」執筆當時の追憶/子規の追憶/スパーク/雜感/二科狂想行進曲/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第二巻』、岩波書店(1937;昭和12年3月)
2-3 『寺田寅彦全集 文學編 第三巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第三巻』、岩波書店(1937;昭和12年6月)、pp.619+7
昭和四年一月から昭和七年十二月までの随筆を発表年代順に収録しています。
年賀狀/化物の進化/數學と語學/さまよへるユダヤ人の手記より/ルクレチウスと科學/野球時代/二つの正月/LIBEB STUDIORUM/夏/映畫時代/レーリー卿/時事雜感/火山の名に就て/日常身邊の物理的諸問題/靑衣童女像/量的と質的と統計的と/カメラを提げて/蓑田先生/家庭の人へ/ラヂオ・モンタージユ/靑磁のモンタージユ/讀書の今昔/物理學圈外の物理的現象/鄕土的味覺/映畫の世界像/「手首」の問題/PROFESSOR TAKEMATU OKADA/千人針/映畫雜感(I)/工學博士末廣恭二君/生ける人形/チユーインガム/映畫藝術/敎育映畫について/烏瓜の花と蛾/札幌まで/ステッキ/音樂的映畫としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」/ロプ・ノール其他/夏目漱石先生の追憶/田丸先生の追憶/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第三巻』、岩波書店(1937;昭和12年6月)
2-4 『寺田寅彦全集 文學編 第四巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第四巻』、岩波書店(1937;昭和12年11月)、pp.611+7
昭和八年一月から昭和九年六月までの随筆を発表年代順に収録しています。NDLのこのデジタルデータは目次の最終5頁が欠落しています。NDLのデジタルコレクションでは、この画像データからOCR経由でWeb版の目次を生成しているようで、本書では「踊る線條」以降の随筆のタイトルが Web版の目次から欠落しています。
鐘に釁る/北氷洋の氷の破れる音/IMAGE OF PHYSICAL WORLD IN CINEMATOGRAPHY/重兵衞さんの一家/鉛をかじる蟲/鎖骨/火事敎育/ニュース映畫と新聞記事/書簡(II)/自然界の縞模樣/藤の實/銀座アルプス/珈琲哲學序說/空想日録/映畫雜感(II)/映畫「マルガ」に現はれた動物の鬪爭/物質群として見た動物群/病院風景/猿の顏/ラヂオ雜感/津浪と人間/耳と目/蒸發皿/記錄狂時代/感覺と科學/言葉の不思議/涼味數題/錯覺數題/神話と地球物理學/學問の自由/試驗管/輕井澤/科學と文學/科學者とあたま/淺間山麓より/沓掛より/二科展院展急行瞥見記/KからQまで/猿蟹合戰と桃太郞/人魂の一つの場合/伊香保/異質觸媒作用/初冬の日記から/猫の穴掘り/思出草/踊る線條/徒然草の鑑賞/雑記帳より(I)/ある探偵事件/變った話/學位に就て/ジャーナリズム雑感/科學に志す人へ/函館の大火に就て/マーカス・ショーとレビュー式教育/庭の追憶/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第四巻』、岩波書店(1937;昭和12年11月)
2-5 『寺田寅彦全集 文學編 第五巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第五巻』、岩波書店(1936;昭和11年11月)、pp.641+7
昭和九年七月から昭和十年十一月までの随筆を発表年代順に収録しています。
ピタゴラスと豆/山中常盤双紙/夕凪と夕風/鷹を貰ひ損なつた話/觀點と距離/喫煙四十年/初旅/雜記帳より(II)/ゴルフ隨行記/子規自筆の根岸地圖/藤棚の蔭から/鳶と油揚/明治卅二年頃/地圖を眺めて/映畫雜感(III)/疑問と空想/破片/天災と國防/家鴨と猿/鴫突き/追憶の冬夜/夢判斷/新春偶語/新年雜俎/相撲/追憶の醫師達/西鶴と科學/颱風雜俎/詩と官能/鴉と唱歌/物賣りの聲/伯林大學/五月の唯物觀/自由畫稿/箱根熱海バス紀行/隨筆難/映畫雜感(IV)/B敎授の死/災難雜考/映畫雜感(V)/海水浴/絲車/映畫と生理/映畫雜感(VI)/靜岡地震被害見學記/高原/小淺間/震災日記より/映畫雜感(VIII)/雨の上高地/日本人の自然觀/小爆發二件/三斜晶系/埋もれた漱石傳記資料/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第五巻』、岩波書店(1936;昭和11年11月)
2-6 『寺田寅彦全集 文學編 第六巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第三巻』、岩波書店(1936;昭和11年11月)、pp.549+6
様々な短い文章が収録されています。「その他」にはタイトルのついた文章が集められていますが、本書の目次では、その詳細は略されています。下記「目次」では括弧書きにて補いました。
短章 その一/短章 その二/斷片/歲時記新註/話の種/その他(赤/神/ラムプのいろいろ/汽船の改良/無線電信の近状/天然色寫眞新法/ムーア燈/寫眞電送󠄁の新法/宇宙の二大星流/雲の話/相撲と力學/蚊帳の研究/天河と星の數/卵の形/猫六題/萬年筆)/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第六巻』、岩波書店(1936;昭和11年11月)
2-7 『寺田寅彦全集 文學編 第七巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第七巻』、岩波書店(1937;昭和12年8月)、pp.648+5
俳諧、俳諧論、漢詩、新體詩、和歌、歌論などを収録しています。謎の俳句
- 哲學も科學も寒き嚏哉
などもあります(嚏:くしゃみ、くさめ)。
俳諧/俳句/年代別/季題別/連句/歌仙/その他の連句/紀行/漢詩/新體詩/和歌/俳諧論/伊吹山の句に就て/夏目先生の俳句と漢詩/連句雜俎/天文と俳句/俳諧の本質的槪論/俳諧瑣談/俳句の型式と其進化/俳句の精神/歌論/歌の口調/宇都野さんの歌/短歌の詩形/御返事/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第七巻』、岩波書店(1937;昭和12年8月)
2-8 『寺田寅彦全集 文學編 第八巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第八巻』、岩波書店(1937;昭和12年4月)、pp.519+6
『寺田寅彦全集 科學編』に収録されなかったもののうち、科學的要素の勝れた一切を「科學雜纂」として収録しています。講演筆記なども含まれています。
熱海間歇泉に就て 附 大湯の變動(本多光太郞・寺田寅彥)/船艇の振動に就て/潮汐の副振動/日本支那近海並に北太平洋の海流/地球の年齡/地球內部の構造に就て/高層氣象の硏究(I)/高層氣象の硏究(II)/地球の剛性に關する學說/航空に危險なる氣流の狀態/山の重量と其壓力/南硫黃島附近の海中に湧出せる新島に就て/新島探檢記/X線の廻折現象と物質の內部構造/アイソスタシーに就て/海流に關するブェルクネス、サンドストレーム及びヘランド・ハンゼンの理論/雨雪の荷電並に雷雨電氣の生因/砂の話/原子の構造に關する學說/原子核に就て/太陽面の變動と地球上の天氣(I)/太陽面の變動と地球上の天氣(II)/分子の會合に就て/海底に於ける土砂の移動に就て/氣象雜俎/波の音/大正十二年九月一日の地震に就て/地球物理學(寺田寅彥・坪井忠二)/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第八巻』、岩波書店(1937;昭和12年4月)
2-9 『寺田寅彦全集 文學編 第九巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第九巻』、岩波書店(1936;昭和11年12月)、pp.483+10
未発表の草稿『物理学序説』と翻訳書を収録しています。『物理学序説』は岩波書店の「科學叢書」のために書き始められたことが判明していますが、予定枚数の三分の一余りで中断されているとのことです。明らかな誤字脱字は編者によって修正されているようです。この未完の作品を読み解こうという試みが数多く存在しますが、この原典を読み込むことが重要です。
物理學序說/事實の選擇(ポアンカレー)/偶然(ポアンカレー)/史的に見たる科學的宇宙觀の變遷(アーレニウス)/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第九巻』、岩波書店(1936;昭和11年12月)
2-10 『寺田寅彦全集 文學編 第十巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第十巻』、岩波書店(1937;昭和12年7月)、pp.468+8
ローマ字で書かれた様々な文章が収録されています。ご存知のように、寺田の高等学校時代の恩師、田丸卓郎も大学で指導を受けた田中館愛橘はローマ字運動の中心人物で、1909年に「日本のローマ字社」を設立しています。そのため、寺田も多くのローマ字の随筆を残しています。
IROIRONO BUNSYOO/Rikiu/Nozen no Hana/Tukimiso/Kagami no nakano Kao/Ehagaki/Hyozan no Hanasi/Syogwatu no Haiku/Tengu ni natta Santaro no Hanasi/Kokoromoti/Umi no nakani hukidasita atarasii Sima/Nawa ya Ito no Kusaru koto ni tuite/Tabi no Omoide kara/Sora no Himitu/Dimen no Agari-sagari/Tatumaki no Hanasi/Taipuraita wo motomete yomeru Uta/Kyokko no Hanasi/Natume Sensei/Uta/X-sen to Kessyotai/Hikoki no Uta/Paris no Hizyobue/Hazimete Masaoka San ni atta Toki/Taiseiyo no Tobikosi to Koso no Kaze/Taiyo no Kokuten to Tikyu no Tenki/Umi no Soko ni 22 mairu no Tonneru/Tikyu no Rekisi/Ame no Oto/Hito wo kuu Uma/Hikoki to Tenki/Kaze no Doryoku no Riyo/Boin no Bunseki/Ame to Konoha/Hosi no Ookisa wo hakaru Michelson no Hoho/Dimen no Myakudo to Tunami/Tuki no Hyomen no Ana to Bakudan no Ato/Kandankei to Ondo no Kankaku/Midu no naka de tuyoi Oto wo dasu Sikake/Hana no Ana/Tetuno Harigane ya Bo no Kensa/Denziki-sayo de Hune ya Hikoki no Mitisirube/4000-pondo no Bakudan/Tenki ga Ningen no Kokoro ya Karada ni oyobosu Eikyo/Hikoki to Sokuryo/Daen no Utukusisa/Todai no Musen-densin/Disin no Yoho wa dekiru ka?/1-kin 500 En no Sato/Dokugasu no Riyo/Tairiku to Taiyo no Naritati/Ongakuka no Sikaku wo sikensuru Kikai/Hatudoki nasino Hikoki/Zihen no Kioku/Yosioka Kun no Omoide/Kwanto-tiho no Tikei to kondo no Disin/Tikyu no Harawata/Kuki no nakano Kwaibutu/Kuki no nakano Kwaibutu/Oodisin no Okorikata ni kwansuru hitotuno Syuki-sei/Kasu no Simatu/Rokugwatu no Hare/Hakari no Hari/Neko sanbiki/OMOTTA KOTO/Kuti wa tada hitotu/Ningen no Tugo/Motyo/Korera no Yobotyusya/Yozyo-doraku/Sugoroku no Sai/Yopparai no Yukue/Hasiken/Konpeito/Suzume no Kao/Igaku to Izyutu/Hikoki to Ningen no Mirai/Oto no Sinkiro/Tanuki no Haratudumi/Tumaranu Koto/Kwagaku no tameno Kwagaku/UMI NO BUTURIGAKU/Dai Ippen/Dai Nihen/ATOGAKI
『寺田寅彦全集 文學編 第十巻』、岩波書店(1937;昭和12年7月)
2-11 『寺田寅彦全集 文學編 第十一巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第十一巻』、岩波書店(1937;昭和12年2月)、pp.802+3
日記(一)として、明治三十二年から大正六年までの日記を収録しています。
明治三十二年/科學者の日記/明治三十三年/明治三十四年/明治三十五年/明治三十六年/明治三十七年/明治三十八年/明治三十九年/明治四十一年/明治四十二年/西遊紀行/北歐旅行記/墺地利及び伊太利/明治四十三年/墺地利及び伊太利(つゞき)/ヘッベル・テアテル/アルゲマイネ・エレクトリツイテーツ・ゲゼルシャフト/ツェントラル・テレフンケンスタチオン/ナショナル・フイジカル・ラボラトリー/瑞西及び南獨逸/明治四十四年/Physikalisch-chemisches Institut in Gottingen/明治四十五年/大正三年/大正四年/大正五年/大正六年/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第十一巻』、岩波書店(1937;昭和12年2月)
2-12 『寺田寅彦全集 文學編 第十二巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第十二巻』、岩波書店(1937;昭和12年9月)、pp.1070+2
日記(二)として、大正七年以後の日記と日記(一)の補遺を収録しています。
大正七年/大正八年/大正九年/大正十年/大正十一年/大正十二年/大正十三年/大正十四年/大正十五年/昭和二年/昭和三年/昭和五年/昭和六年/昭和七年/昭和八年/昭和九年/昭和十年/補遺/明治二十五年/明治二十六年/明治二十九年/明治三十一年/明治四十四年/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第十二巻』、岩波書店(1937;昭和12年9月)
2-13 『寺田寅彦全集 文學編 第十三巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第十三巻』、岩波書店(1937;昭和12年12月)、pp.744+8
平常懐中して使用していた手帳の大部分を収録しています。
明治三十六年/明治三十六―三十七年/明治三十九年/明治四十年七―八月/明治四十二年/明治四十三―四十四年/明治四十四年/明治四十四年/大正二―三年/大正三年/大正三―四年/大正五―十一年頃/大正六年以降/大正六年/大正六―十三年/大正七―十四年/大正七年頃―十年頃/大正八年(ローマ字懷中日記)/大正八年/大正九年頃―昭和四年頃/大正十年(ローマ字懷中日記)/大正十一年/大正四―十二年/大正十二―十四年頃/大正十二年(ローマ字懷中日記)/大正十三年(ローマ字懷中日記)/大正十四年(ローマ字懷中日記)/大正十五年・昭和元年(ローマ字懷中日記)/昭和二年(ローマ字懷中日記)/昭和二年頃/昭和三年(ローマ字懷中日記)/昭和四年(ローマ字懷中日記)/昭和四年頃/昭和五年(ローマ字懷中日記)/昭和五―九年/昭和六年(ローマ字懷中日記)/昭和六年頃/昭和六年頃―九年頃/昭和六―七年頃/昭和七年(ローマ字懷中日記)/昭和八年(ローマ字懷中日記)/昭和九年(ローマ字懷中日記)/大正十一年―昭和十年/昭和十年(ローマ字懷中日記)/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第十三巻』、岩波書店(1937;昭和12年12月)
2-14 『寺田寅彦全集 文學編 第十四巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第十四巻』、岩波書店(1937;昭和12年5月)、pp.1008+4
書簡集(前半)として、昭和三年までの書簡を収録しています。
明治十七年/明治十九年/明治三十六年/明治三十七年/明治三十八年/明治三十九年/明治四十年/明治四十一年/明治四十二年/明治四十三年/明治四十四年/大正元年/大正二年/大正三年/大正四年/大正五年/大正六年/大正七年/大正八年/大正九年/大正十年/大正十一年/大正十二年/大正十三年/大正十四年/大正十五年/昭和二年/昭和三年/索引/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第十四巻』、岩波書店(1937;昭和12年5月)
2-15 『寺田寅彦全集 文學編 第十五巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第十五巻』、岩波書店(1937;昭和12年10月)、pp.975+2
書簡集(後半)として、昭和四年以降の書簡と補遺若干を収録しています。OCR(光学的文字認識)で読み取られているため、全文検索可能です。「小宮」、「中谷」、「渡辺」などと検索すると、目当ての書簡を発見できます。
昭和四年/昭和五年/昭和六年/昭和七年/昭和八年/昭和九年/昭和十年/年次不詳/補遺/明治四十二年/明治四十三年/明治四十四年/明治四十五年/大正六年/大正七年/大正十年/大正十一年/大正十二年/大正十三年/大正十四年/大正十五年/昭和二年/昭和三年/昭和十年/索引/後記
『寺田寅彦全集 文學編 第十五巻』、岩波書店(1937;昭和12年10月)
2-16 『寺田寅彦全集 文學編 第十六巻』
▼ 『寺田寅彦全集 文學編 第十六巻』、岩波書店(1938;昭和13年1月)、pp.749+66+11+17
書籍批評、序文、推薦、應問、雜、雜記帳、スケッチブック、斷片、作文、雲の話、日本文學の諸斷片、講演及談話、第七巻と第十五巻の補遺を収録しています。また、年譜、總目禄が添付されています。
書籍批評/「俳諧師」に就て/左千夫歌集を讀む/「氷魚」を讀みて/「地懷」を讀みて/「あらたま」雜感/「赤彥童謠集」/藤原博士の「雲」/「芭蕉連句の根本解說」に就て/地震と光り物/岡田博士の「測候瑣談」/定本「世界映畫藝術發達史」/科學的文學の一例/「ギリシヤとスカンデイナヸヤ」/「西洋拜見」を讀んで/小泉八雲祕稿畫本「妖魔詩話」/靑楓の果實蔬菜描寫/「漱石襍記」について/序文/「冬彥集」自序/「藪柑子集」自序/「萬華鏡」自序/「現代日本文學全集」吉村冬彥篇の序詞/「續冬彥集」自序/「柿の種」自序/「柿の種」扉裹へ/「物質と言葉」自序/「蒸發皿」自序/「觸媒」自序/「螢光板」自序/神谷尚志「ひとりしづか」序文/百溪祿太郞「祖母嶽」再版序文/土井八枝「土佐の方言」序文/推薦/應問/雜/雜記帳/スケッチブック/斷片/作文/雲の話/日本文學の諸斷片/講演及談話/吾が中學時代の勉强法/極度の寒さ/漱石先生俤草/夏目先生の自然觀/座談/ウェゲナーの大陸移動說/旋風に就て/火災と氣象との關係/火災論の講義に就て/ロンドン大火と東京大火/火災硏究の基本材料/伊豆地震/大地震と光り物/地震に伴ふ光の現象/山火事の警戒は不連續線/シベリアの大山火事/不連續線と溫度の注意で山火事を豫防/室戶の奇現象/第七卷補遺/第十五卷補遺/年譜/後記/總目錄
『寺田寅彦全集 文學編 第十六巻』、岩波書店(1938;昭和13年1月)
3.書斎の本棚/図書館の書棚から
このコーナーでは、本文に登場した本、関連書籍をさらに紹介します。
3-1 池内了『ふだん着の寺田寅彦』
▶ 池内了『ふだん着の寺田寅彦』、平凡社(2020)、pp.224
著者、池内了(1944-)は宇宙物理学の研究者で、名古屋大学と総合研究大学院大学の名誉教授。一般向けの科学書を多数執筆。 私、探訪堂は、みすず書房の『寺田寅彦と現代:等身大の科学を求めて』や、岩波新書の『疑似科学入門』などを愛読しています。寺田寅彦に関する池内の一般向けの本に、本書『ふだん着の寺田寅彦』があります。寺田の人物像については、後年、弟子たちが様々なエピソードを残していますが、最も寺田に近かった人物、小宮豊隆(1884-1966)も『漱石・寅彦・三重吉』、明日香書房(1949)という本を書いています。8割以上が漱石を扱ったものですが、寺田寅彦については、その冒頭で
寅彦の随筆は、寅彦が科学者としての後光を持っているいないに拘わらず、後世に残る価値を持っている。 (中略) 寅彦は随筆を、科学者として書く前に、人間として書いた。寅彦の随筆の高さは、寅彦の人間としての高さである。会って話しをしていて、寅彦ほど人を刺激し、反省させ、より高いものへの情熱を燃え立たせる人間はなかった。然もそれが、御説教じみた、押しつけがましい仕方ではなく、当人はまるでそんな事は意識していないかのように、こっちに自然に滲み込んで来るのである。(小宮豊隆『漱石・寅彦・三重吉』、p.275)
という感慨を述べています。この人、寅彦の日記や随筆に「小宮君」としてよく登場します。なんと、夏目漱石の高弟にして、あの “三四郎” のモデルで、漱石山脈の中心人物です。岩波版『寺田寅彦随筆集』(全5巻)の編者でもある小宮の書いた上の文章の中身を、より具体的に確かめることができるのが、この池内『ふだん着の寺田寅彦』です。参考文献が細かく示されている訳ではないのが残念ですが、書名の通り、寅彦の日常生活が淡々と描かれていて、寅彦ファン必見の一冊です。医者嫌いで癇癪持ちながらどこか憎めない。子供のこととなると心配で心配でおろおろする。しかし、思った通りの頑固おやじぶりでした。なお、上で引用した小宮豊隆『漱石・寅彦・三重吉』は国立国会図書館/個人送信サービスで閲覧できます。
3-2 山田一郎『寺田寅彦 妻たちの歳月』
▶ 山田一郎『寺田寅彦 妻たちの歳月』、岩波書店(2006)、pp.362
寺田寅彦が最初の妻、陸軍中将、阪井重季の長女、夏子と結婚したのは 1897年、寅彦20歳、夏子15歳でした。夏子は20歳になる前に肺結核でその短い生涯を閉じます。『寺田寅彦随筆集 第一巻』冒頭の切ない名作、「どんぐり」ですね。寺田の代表的な筆名「冬彦」の由来はお分かりいただけたでしょうか。ところで、私、探訪堂が頼りにしている小林惟司『寺田寅彦の生涯』の「寅彦をめぐる女性たち/悪妻ということ」では
次に郷里の浜口真澄の女寛子(ゆたこ)をもらい、四人の子供をあげたが、曙町の自宅の新築が成る直前に出産をひかえたまま結核で一夜にして右肺全部をおかされ逝ってしまった。この寛子という人は非情に温厚な、静かな人で、親戚の人たちの評判もすこぶるよい。さて、第三の妻、紳子(しんこ;志ん)のことをここで語らねばならない。 (小林惟司『寺田寅彦の生涯』、p.113より)
と述べて、「悪妻ということ」を滔々と語り始めます。紳は本当に悪妻だったのか。
残された紳の日記を詳細に調べ上げて、寅彦の晩年の生活を鮮やかに描きだした傑作が、山田一郎『寺田寅彦 妻たちの歳月』です。著者、山田一郎(1919-2010)は歴史研究家で寺田寅彦研究の第一人者。1981年寺田寅彦記念賞、1982年芸術選奨新人賞受賞を受賞した、山田一郎『寺田寅彦覚書』、岩波書店(1982)は、国立国会図書館/個人送信サービスで閲覧できます。