第8話 北川敏男編『續サイバネティックス』を読み解く ❖ 理系書探訪【書評記事】

日本學術會議主催の「サイバネティックス」討論會、概念理解に的を絞った第1回討論會に対し,1953年9月の第2回討論會では、サイバネティックス的なシステム構築の要となる重要概念 “自動制御機構と情報通信過程” の詳細を取り上げます。自動制御工學、通信工學、物理測定論、脳生理學のパイオニアが登壇、白熱した議論が展開されます。そして、その内容の展開はそれぞれの所属学会に引き継がれることになります。本稿では、その議事録、北川敏男『續サイバネティックス』を読み解きます。

1.北川敏男編『續サイバネティックス : 自動制御と通信理論』の概要

本書も、前巻、北川敏男編『サイバネティックス:境界領域としての考察』と同様、国立国会図書館の個人送信サービスで閲覧できます。

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1-1 カバー袖の概要文

本書のカバー袖の概要文(デジタルコレクション未収録)と目次を見ておきましょう。

北川敏男編『續サイバネティックス : 自動制御と通信理論』、みすず書房(1954)

インターネットで読める

北川敏男編『續サイバネティックス : 自動制御と通信理論』、みすず書房現代科學叢書 11(1954/8)、pp.159

第2回討論會は1年ほど経った1953年9月に、北川敏男が勤務する九州大学で行われました。運営は、前回の最終セッションに登壇した九州大学の小野周に託されました。カバー袖の概要と目次を確認しておきましょう。

北川敏男編『續サイバネティックス 』目次

今回も、第1回と同様、錚々たるメンバーが集まりました。九州大學工學部應用理學教室と理學部数學教室の学生たちも集結し、多數の参加者を得て「定刻を過ぎても、質疑討論は、いつ果てるともなく續くという、極めて和やかで且つ有益な會合」であったとのことです(集合写真や現場写真がないのは残念ですが)。

1-2 サイバネティックスとフィードバック

サイバネティックスをどのように理解するか、これはなかなか奥深い問いです。

ジョサイア・ウィラード・ギブズの確率システム論的な世界観、フィードバックによる因果関係の操作がもたらす目的論的機械論、マシンと情報処理系間のエントロピー生成の問題、半精密科学の取扱い等々、項目を挙げれば切りがないですし、それを包含する北川の情報学等々、ウィーナー以後の歴史もあります。

工学系の方と話しをすると、サイバネティックスは、簡単に言えば、制御工学における “ネガティブ・フィードバック(負帰還)” という概念を、人間=機械複合系、社会システム、生態システム、生物システム、脳科学、精神科学などに拡張して適用できるというだけの主張でしょ、という反応が還ってくることがあります。しかし、ウィーナー以前の世界では「自動制御」といえばマシンの制御のことであり、「負帰還」は濾波回路や増幅回路の話しで、さらにプロセス制御はそれらとは別世界の話しということで、これらは “制御工学” というジャンルとして明示的に関連づけられていなかったようなのです。日本においても、事情は同じで、電気電子系、通信系、機械系、数学、物理学の間に積極的な情報交換がなく、第1回討論會に登場した物理学者の高橋秀俊などは、「学問分野間の情報流通の悪さの故」という、さすがはロゲルギストという印象的な言葉を残しています。ウィーナーのサイバネティックスは、そのような時代に、数学者、物理学者、工学者、社会学者、経済学者、脳神経学者、精神科学者、哲学者等を一堂に会しての議論の末にまとめ挙げられた思想ですから、驚くべきことです。

2.最初の登壇者:高橋安人

最初の登壇者は、自動制御工学の牽引者、高橋安人(1912-1996)です。日本学術会議協力学術研究団体としての日本機械学会の代表と考えればよいでしょう。東京上野学士院で行われた第1回討論會、冒頭セッションで座長を務めました。兼重寛九郎(1899-1989)の招きで、名古屋帝国大學から東京帝国大學第2工学部の教授に着任したのが1944年、以後、兼重の激励のもと、活発に産学協同活動を展開する傍ら、良質な自動制御の教科書を次々と世に送りだし、我が国新制大学において、新しい授業科目「制御工学」が定着するための基礎を固めました。

兼重は、戦後日本が軍事大国から科学技術立国へと大きく舵を切る時代において、日本学術会議の発足にむけた提言をまとめる “学術体制刷新委員会” の委員長をつとめた機械工学界の重鎮です。この兼重が制御工学の師匠として高橋に紹介したのは寒川武(1909-1945)。この人はアスカニア(株)というドイツ精密工学企業の日本法人の制御エンジニアで、36歳の若さで病没しますが、関係者によって遺稿が整理されて、1948年に

が出版されます(これは国立国会図書館/個人送信サービスで読めます)。主として、微分方程式を直接、解析的に解くという手法で書かれていますが、後の制御工学の主要概念が登場しています。

ところで、高橋安人とサイバネティックスとの出会いは、1949年の秋頃、進駐軍の将校から、出版されたばかりのノーバート・ウィーナー『サイバネティックス』の原書をプレゼントされたことで、翌年1月には日本機械学会誌に書評記事を載せています(この書評記事には高橋の “システム観” が明確に現れています。因果関係の成立は必須要件としています)。制御の対象を工学一般に限定しないという考え方は、このころからのようで、1954年に出版された、高橋安人『自動制御理論』(初版)、岩波全書の冒頭では、

と述べています。フィードバックの概念は、1920年代の船舶用オートパイロット、1930年代のベル研究所の帰還回路、1940年代の砲塔制御のサーボ機構等として、別々の技術体系として発展してきた歴史があり、上の引用文の「自動制御問題」という言葉はそれを象徴しているようです。加えて、この「システム全体」という言葉は、ウィーナーのサイバネティックス的な意味(社会システムや生態系、生物サイバネティックスなどを含む)で使われていると考えるべきでしょう。なお、“自動化(オートメイション)” というキーワードは、サイバネティックス付きの自動化のことで、当サイトの書評記事、「第7話 北川敏男編『サイバネティックス』を読み解く」で登場した理系官僚、後藤誉之助が産業界に紹介してまわった概念です。高橋は、1959年の『自動制御理論 改訂版』の「改訂版序」を、

という感慨から始めています。

2-1 高橋安人「自動制御工學とサイバネティックス」

自動制御の理論については、第1回討論會で高橋秀俊が「新しい機械論としてのサイバネティックス」において述べています。高橋秀俊は、自動制御という学問が存在しなかった1930年代、必要に迫られて、負帰還(ネガティブ・フィードバック)回路の安定性の問題を数理的かつ物理学的な考察から解いていて、

と述べています。高橋安人は、自動制御工学に砲塔制御のサーボ機構から入っていますから、物理系の高橋秀俊とは、おもむきが違います。高橋安人は、個々の要素技術については寒川武流、学問を貫く姿勢は兼重流です。すなわち、さまざまな制御要素について、実際にその製品化の現状を語り、また、先進的な制御理論や設計法であっても、現場のオペレータが使いこなせるかという点に着目し運用実績を重視しているようにみえます。

高橋安人「自動制御工學とサイバネティックス」目次

講演後の討論は、普段の学会ではみられない貴重なもので、高橋安人とは異なる系統から制御理論や情報理論にかかわってきた蒲生秀也、大泉充郎、喜安善市、大森恭輔らが参加して、噛み合う議論、噛み合わない議論が交錯、実に不思議な余韻を残します。たとえば、大森恭輔(1910-1967)は、第1回のサイバネティックス討論會で登壇した小野周の先輩格に当たる理論物理学者ですが、オンサーガーの相反定理がフィードバック系の成立要件になっているのでは?と問うています。これに対する高橋安人の答えがややすれ違いを見せると、量子物性論の蒲生秀也が相反定理はアクティブな系では満足されないという私見を述べます。私、探訪堂の興味を引いたのは機械工学、電気工学、応用化学等の境界領域に成立する “制御工学教育” を展開するためには、工学分野の分類の見直しが必要という見解で、のちに情報処理学会の大御所となる大泉充郎(じゅうろう;1913-1991)が関心を寄せていました。この異種無差別格闘戦を経て、高橋安人の教科書の色彩は、寒川的な機械一色から次第に変化、自由市場経済の水槽モデルを求む問題とか、高橋秀俊流のエネルギーポート論などが登場することになるのです。

インターネットで読める(再記)

北川敏男編『續サイバネティックス : 自動制御と通信理論』、みすず書房現代科學叢書 11(1954/8)、pp.159

討論會開催は1953年9月5日ですが、2週間後の9月18日と19日には東京竹芝の東京都立工業奨励館で、兼重を会長とする自動制御研究会が本邦初の自動制御講習会を開催、全国から227名を集めています。

2-2 高橋安人『機械人間の話』

科学好きの小中学生のために書かれた “機械人間(ロボット)” の話しが、

高橋安人『機械人間の話』、目黒書店(1949)、pp.150

です。この手の本としては唯一のようです。人間のような働きをするからといって、人間型の鋼鉄人形である必要はなく、それぞれの仕事に一番都合の良い形にすればよい、と冒頭で断っています。数式や専門用語を使うことなく自動制御の重要な概念を説明していますが、目次をみると分かるように、なかなか本格的です。

高橋安人『機械人間の話』目次

フィードバック機構を「ロボットじかけ」、動作点における零入力応答の局所漸近安定性を「自己制御性」などと工夫して説明しています。子供たちも、きっと、解った気にさせられたことと思います。

そう来ますか、という感じですが、66枚の図を駆使して楽しい比喩を交えながらの説明で、恐らく、本人が一番愉しんでいたようです。なお、最終節「19. むすび」では、脈拍の安定性、斜面を下るスキーヤー、インフレーション、日本の政治状況にも言及して、 “制御” を使って「気持ちのよい社会にしようではありませんか!」と結んでいます。ウィーナーが望んだサイバネティックス社会建設の呼びかけでしょうか。

インターネットで読める

高橋安人『機械人間の話』、目黒書店(1949)

2-3 高橋安人『自動制御理論 改訂版』

1940年代初頭に、サーボ機構(追従制御系)と同義であったころの “自動制御” は、ナイキストの定理を有するベル研究所流の自動調整メカニズム(オートマチック・レギュレーション)やプロセス制御の体系と合流したのち、さらにウィーナー『サイバネティックス』の影響を受けて変貌します。サイバネティックスのギブズ流確率論からは出力の “期待値” の制御を試みる統計的制御が、2進法を基礎とする通信と計算機の構成論からはサンプル値制御系という新しい分野が生まれて急速に発展していきました。サイバネティックスの影響を受ける前の自動制御の教科書として

などがあります。高橋と伊沢は、オルデンブルグとサルトリウスの教科書

を翻訳しています。原著第1版の出版は1944年ですから、内容がやや古いものの、ラプラス変換法による制御系の記述や不連続制御の取扱いが明快であることから、日本で出版する意義があると高橋、伊沢は述べています。これらを踏まえて、サイバネティックス的な制御系の統計的取扱い、サンプル値制御系の詳細を取り込んだ教科書が

高橋安人『自動制御理論 改訂版』、岩波全書(1959)、pp.295

です。以上の4冊は、いずれも国立国会図書館の個人送信サービスで閲覧できます。

インターネットで読める

高橋安人『自動制御理論 改訂版』、岩波全書(1959)

高橋安人『自動制御理論 改訂版』目次

序/改訂版序/記号

第1章 フィードバック制御
1.1 自動制御の発達/1.2 構成要素/1.3 フィードバック制御系/1.4 フィードバック回路の理論/1.5 シンセシス
第2章線型特性の諸表現
2.1 微分方程式/2.2 過渡応答/2.3 周波数応答/2.4 伝達函数/2.5 信号の要素通過/2.6 ベクトル軌跡/2.7 周波数線図
第3章 低次要素特性
3.1 要素特性の検討/3.2 0次比例要素/3.3 1次比例要素/3.4 1次積分要素/3.5 不安定な1次要素/3.6 1次微分要素
第4章伝達函数の結合
4.1 ブロック線図/4.2 ブロック線図変換法/4.3 直列結合系/4.4 並列結合系/4.5 フィードバック結合系/4.6 自動調節器の原理と動作
第5章 高次要素特性
5.1 インピーダンス/5.2 振動性2次要素/5.3 要素の接続/5.4 集中定数系の伝達函数/5.5 分布定数系の伝達函数——熱伝導系/5.6 パーコレーション/5.7 むだ時間とそれによるプロセス特性近似法/5.8 直流電子アナログ回路
第6章 制御回路の性質
6.1 制御回路の検討/6.2 定常偏差と過渡偏差/6.3 自動調節系の入門例/6.4 サーボ機構の入門例/6.5 フルビッツの安定判別/6.6 特性式の根の分布および軌跡/6.7 安定度とその判定/6.8 最適調整諸論/6.9 非線型の場合/6.10 非線型の最適応答制御
第7章 単一回路の周波数応答計算
7.1 ナイキストの安定判別/7.2 ゲインと位相の余有/7.3 極線図上の M-N 曲線/7.4 ゲイン-位相線図上のM-N曲線/7.5 閉回路特性/7.6 過渡応答の近似計算/7.7 サーボ機構の検討例/7.8 プロセス制御系の検討例/7.9 非線型系の近似周波数応答/7.10 効率調整の一方式
第8章 単一でない回路
8.1 概説/8.2 入力点が二つ以上の回路/8.3 局部フィードバックの利用/8.4 制御系の共存/8.5 結合制御系/8.6 回路を切って解く方法
第9章 統計的計算
9.1 概説/9.2 自己相関函数/9.3 スペクトル密度/9.4 確率過程からの計算例/9.5 定常不規則変化信号の要素通過/9.6 要素の入出力関係
第10章 サンプル値制御系
10.1 概説/10.2 時系列とz変換/10.3 z-変換の各種の形/10.4 逆z-変換/10.5 パルス伝達函数/10.6 伝達函数の結合/10.7 簡単な制御系の例/10.8 応答を指定した設計/10.9 一般性能を考えた設計
第11章 原子動力系の自動制御
11.1 概説/11.2 原子炉内の連鎖反応/11.3 原子炉の線型動特性/11.4 原子炉内の熱交換/11.5 蒸気式原子動力系の例/11.6 ガス式原子動力系の例
A 付録
A.1 ラプラス変換計算法/A.2 z-変換公式集/A.3 特性方程式の数値解法/A.4 電子アナログ計算/A.5 自動制御専門書の案内

索引

3.二人目の登壇者:喜安善市

二人目の登壇者は、電気通信学会(現在の電子情報通信学会)の代表、喜安善市(1915-2006)です。この人は日本の電子計算機研究の先駆者として知られる電子工学者。1944年、東北帝国大學卒業後、日本電電公社電気通信研究所の前身である逓信省電気試験所に入所、第二部部長の大橋幹一博士(1899-1989)のもとで無装荷ケーブルを用いた通信方式の研究に従事します。大橋は、

電気通信の分野で確立したフィード・バックの理論によって自動制御が急速に進歩する 
萩原他『わが師・わが友(2)』、みすず書房(1967)、p.206

という見通しをもっていたことから、そこで用いた無歪増幅器の多重フィードバック機構を、逆に、自動制御へ応用することを模索しはじめます。

戦後、喜安はノーバート・ウィーナーの『サイバネティックス』に出会うことになりますが、自分たちの研究がサイバネティックスにまで昇華することができなかったことを悔やんでいます。この喜安善市、自動制御工学が広く認識される以前から、フィードバック回路網の設計に携わってきた研究者ですが、戦中、多量の数値計算に辟易した経験から、高橋秀俊研究室のパラメトロン素子に当初から興味を示していました。そして、東京大学高橋研究室、電電公社、国際電電が共同でパラメトロン計算機の開発に邁進することになります。のちに、喜安はパラメトロン計算機開発を巡る産学官共同について

と述べています。

3-1 喜安善市「サイバネティックスと電氣通信技術」

サイバネティックスは “制御と通信” の学問ですから、制御工学の高橋安人のあとは、この人、電気通信のエキスパート、喜安善市の登場です。まず、電気通信が転送(トランスミッション)と交換(スイッチング)という二つの側面をもつと断ったあと,ウィーナー以前は、“転送の問題” では決定論的な議論に留まっていて、ウィーナーによる統計的概念の導入によって、初めて現在の通信理論にまで飛躍したと述べます。転送路に混入する雑音の除去の問題、誤りの検出と訂正(フィードバック)の問題などが解説されます。“交換の問題” での喜安の関心は、全国的な通信網を、需要に応じて如何にして段階的に構築するかということのようで、そのためにはウィーナーのサイバネティックスを超えて、北川流の管理と計画の科学を駆使することが重要であると講演を締めています。

さて討論です。座長は京都大学の前田憲一(1909-1995)で電波物理研究所の所長だった人。蒲生、喜安、大泉に座長前田も加わって、喜安との討論が繰り広げられます。喜安は

という研究課題に挑んでいきたいと述べています。

喜安善市「サイバネティックスと電氣通信技術」目次

インターネットで読める(再記)

北川敏男編『續サイバネティックス : 自動制御と通信理論』、みすず書房現代科學叢書 11(1954/8)、pp.159

3-2 喜安善市・室賀三郎『情報理論』

1955年、電波技術協会内に設立された電子計算機調査委員会において、トランジスタ方式は通産省工業技術院電気試験所の和田広、パラメトロン方式は電電公社電気通信研究所の喜安善市が中心となって試作をすすめることになります。喜安の配下では、室賀三郎(1925-2009)らも開発に参加します。このふたりの共著が

です。かれらは序論において、ウィーナーのサイバネティックスについて

と述べています。1948年にベル研究所のシャノンがもっと完全な形に情報理論を統一的にまとめあげた、として、この本ではシャノンの研究を中心とする情報理論を概説するとしています。専門的ですが、かなり基本的で、多くの具体例を使って完結にまとめあげています。

喜安善市、室賀三郎『情報理論』目次

第1章 序論
歴史的背景/情報とは何か?/通信はどう行われるか?
第2章 情報量とエントロピー
情報量の数式表示/離散的確率変数のエントロピーの性質/連続的確率変数のエントロピーの性質
第3章 離散的情報源
MARKOFF過程とSHANNON線図/情報源としての自然語/情報源のエントロピー/情報源の冗長度
第4章 雑音のない離散的通信路
変換器としての送信器、受信器の機能/雑音のない離散的通信路の伝送速度と通信容量/符号化に関する基本定理/最良の符号化法
第5章 雑音のある離散的通路
曖味度、散布度と伝送速度/通容量に関する基本定理/通信容量の表現
第6章 雑音のある離散的通信路上の符号化
符号化の概念/無駄のない組織符号系/無駄のない符号系ではない組織符号系/組織号の復号法と長さが小さい組織符号系の例/必ずしも群をなさない符号系
第7章 連統的通信系
連続的情報と雑音の表示/連続的通信路の伝送速度と通信容量/相加的な雑音のある連続的通信路
文献および参考書

インターネットで読める

喜安善市、室賀三郎『情報理論』、岩波講座 現代応用数学B9(1957)

3-3 H.W. ボーデ(喜安善市訳)『回路網と饋還の理論』

喜安による翻訳書、

H.W. ボーデ(喜安善市訳)『回路網と饋還の理論』、岩波書店(1955)、pp.541

は、戦時中にベル研究所で行われた講習会の資料を、戦後になって正式に出版したテキストの邦訳です。原題は「ネットワーク解析とフィードバック増幅器の設計(1945)」。それまでにも、フィードバック制御の手法は、さまざまな分野で使われていたのですが、電気回路に限定することなく、一般的で合理的な設計手法としての「フィードバック制御」が体系化されたのは本書が初めてで、戦時中、米国では謄写刷りのこの講習会テキストがあらゆる分野で使われたとのことです。訳者の喜安らも、1939年に同様の着想を得て研究を進めていました。このあたりの事情は、みすず書房の『わが師・わが友 第2』(1967)に収録された、喜安善市「私の情報理論の温床」に詳しく述べられています。

インターネットで読める

H.W. ボーデ(喜安善市訳)『回路網と饋還の理論』、岩波書店(1955)

ボーデ『回路網と饋還の理論』目次

訳者の前がき/はしがき/記号表

人名索引/事項索引

4.三人目の登壇者: 蒲生秀也

三人目は応用物理学会から。蒲生秀也(1924-2006)は、情報理論、光・量子エレクトロニクスの分野で活躍した実験物理学者で、ロゲルギスト・高橋秀俊の門下生です。同じく、ロゲルギストの磯部孝(1914-2001)は計測と制御の専門家ですが、その磯部との間に共著書

があります。蒲生は、1958年にIBMのトーマス・J・ワトソン研究所の物理学研究員として渡米、その後、ロチェスター大学教授を経て、1968年にカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の工学教授に着任します。

蒲生秀也の書いたサイバネティックスの解説書は、読者が知りたいことを網羅していて、この手の書籍のなかでは出色です。師匠の高橋秀俊と同様、関心分野が幅広く、培った見識に基づいて、サイバネティックスと物理学の関係を問い続けています。それはサイバネティックスの理論体系や歴史的経緯にも及びます。また、日本のサイバネティックス的運動の萌芽にも関心を寄せており、

と記して、その筆頭研究者として寺田寅彦の名を挙げています。また、伏見康治の『確率および統計論』、渡辺慧の『時間』なども取り上げています。いずれも、当サイトの主人公格の研究者たちです。さらに、北大の今堀克己(1905-1952)、東大の高橋秀俊についても検討を進めています。

4-1 蒲生秀也「測定の限界とインフォメーション」

さて、この第2回討論會でのテーマは

蒲生秀也「測定の限界とインフォメーション: 測定論の一つの試み」

です。前半は精密科学における測定の限界の話し、後半は物理系と情報処理系間における情報のやり取りが何をもたらすかに関する検討です。マックスウェルの悪魔に関係した話しですね。

蒲生秀也「測定の限界とインフォメーション:測定論の一つの試み」目次

まず、前半の「測定の限界」の話題です。
気象学、計量経済学、動態社会学、生物統計学、大脳気象学などのいわゆる “半精密科学” では、必要とされる量の精度はせいぜい数桁ですから、これらに数理解析を施す場合には、確率統計的な研究手法を導入する必要があります。これに対して、物理学、天文学などの精密科学では、理論的に、いったいどこまで測定精度を高められるのか、ということが問題になります。極めて微細な数値を問題とすることから、測定に際しては何らかの信号増幅などが必要となり、また、精密さを保証するために、そのような測定系にフィードバックループを組み込むことにもなります。このループの外側には、大きなエネルギー源が控えているのが普通です。このような測定系をアクティブ(能動的)な測定系といい、そのような系の精度限界を定める “物理法則” をひとつひとつ検討していきます。

インターネットで読める(再記)

北川敏男編『續サイバネティックス : 自動制御と通信理論』、みすず書房現代科學叢書 11(1954/8)、pp.159

後半の物理=情報結合系における「インフォメーション」の話題では、そもそもインフォメーションとは何かを問うことから始めます。フィーッシャー流の定義とウィーナー=シャノン流の定義の比較ですね。ついで、物理系のエントロピーと通信のエントロピーの関係を考察します。アナロジーとしての学習効果だけではなく、一歩踏み込んで、エントロピーとインフォメーションの比較を行っていきます。そのうえで、

實在するデーモンはアクティブな系でなければならない

という結論を導きます。この討論會に先立つ1951年にレオン・ブリルアン(1889-1969)らが、悪魔が気体分子の速度を光で観測すると、その測定過程でエントロピーが増加すると主張して、マックスウェルの悪魔は葬り去られたと解釈されたのですが、蒲生は彼らの解析手法に満足せず、通信の量子理論を持ち出します。なお、マックスウェルの悪魔の議論は、その後、悪魔が観測したことを忘れるまでエントロピーは増加しないという見解などが錯綜して決着していませんが、2017年、NTT物性科学基礎研究所が、トランジスタ内で動作する悪魔の実現に成功した等々、興味深い話題が満載です。

4-2 蒲生秀也、桝本セツ編著『サイバネティックスとはなにか』

蒲生秀也はサイバネティックスに関する文章を雑誌や解説集などに発表していますが、一般向けの解説書として、ある程度の分量のあるものとして、

蒲生秀也、桝本セツ編著『サイバネティックスとはなにか:コミュニケーションとオートメーションの科学』、春秋社(1956)、pp.242

が唯一のもののようです。これは三章構成で、第一章が蒲生による「サイバネティックスとはなにか」、第二章と第三章がソビエトの雑誌『哲学の諸問題』に掲載された論文の邦訳(訳者は桝本セツ)で、当時のソビエトにおけるサイバネティックスの受け入れ方を知るうえで格好の資料です。ソボレフは、あの微分方程式論の大御所です。

さて、第一章、蒲生秀也「サイバネティックスとはなにか」の中身ですが、下記のような構成です。ノーバート=ウィーナー『サイバネティックス:動物と機械における制御と通信』が専門的な論文の集合体で、しかも、執筆当時、白内障と近視の手術の直後ということもあって口述筆記による独特の文体に手こずった経験がおありかと思います。核心を突くひと言がないのですね。蒲生の解説書は、ウィーナーの前後の状況も併せて、知りたかったことをはっきりと理解できるように書かれています。実例も豊富で、ありがたい一冊に仕上がっています。

蒲生、桝本『サイバネティックスとはなにか』目次

まえがき(蒲生秀也)
第一章 サイバネティックスとはなにか pp.1-129
1 サイバネティックスはなにを研究するのか
2 サイバネティックスは一つの科学であろうか
3 サイバネティックスの生まれた基盤はなにか
4 サイバネティックスの一分科、情報の理論とはなにか
5 サイバネティックスとしての制御の理論とはなにか
6 自動計算機はサイバネティックスにおいていかなる位置をしめるか
7 サイバネティックスは生物からなにを学んだか
8 サイバネティックスは言語、社会の問題をどのようにとりあげたらよいか

追記

第二章 サイバネティックスの意義と役割(エ・コールマン)
第三章 サイバネティックスの本質(エス・エル・ソボレフ、ア・イ・キトフ、ア・ア・リヤプ ノフ)


第一章の註/第二章の註/第三章の註
あとがき(訳者桝本セツ)

インターネットで読める

蒲生秀也、桝本セツ編著『サイバネティックスとはなにか:コミュニケーションとオートメーションの科学』、春秋社(1956)

5.最後の登壇者: 時實利彥

第1回討論會には、“日本の脳波学の父” 、本川弘一(1903-1971)が登壇しましたが、この第2回討論會の最後に登場した時實利彥(1909-1973)は、前回に続いて今回も医学/生理学分野から誰か話しをしろという主催者の要請に応えて駆り出された、とその経緯を語っています。先輩である本川のご指名でしょうか。

東北大学の時實利彥といえば、岩波新書の『脳の話』(1962)で著名な大脳生理学者で、私、探訪堂もその昔、夢中になって読んだものです。特に、文中で紹介された神経生理学者、ジャック・パイヤール(1920-2006)の「運動系と感覚系の閉回路」という図は、驚くべきもので、感覚系の受容器から小脳を経由して効果器に到るフィードバックループだけでなく、入力系の脳幹網様体、間脳、感覚野、連合野、運動野、嗅脳、基底核、視床下部を経て出力系の脳幹網様体から運動系の効果器へと到る錯綜した閉回路、また、受容器から効果器を直接結ぶ閉回路さえも存在していて、「二段構え、三段構えの調節の仕組みで、私たちの運動、動作の正確さ敏捷さが保証されている」と書かれています。

5-1 時實利彥「筋運動支配の自動制御機序について」

講演題目の「機序」は主に医学系で使われる用語で “仕組みとかメカニズム” の意味です。この日の講演では、まず、ローゼンブリュートとウィーナーは分析的な実験も行ったが期待した成果はでなかったと述べたのち、今日は、サイバネティックス的に分かり易い筋運動の制御に話題を限定して、自身の実験データを引用しながら、筋運動支配における自動制御メカニズムの詳細を説明すると切り出します。

脳と筋を結ぶ神経経路を “神経の環” とよび、それを解剖學的実験によって明らかにしていく作業を語ります。そして、その “自動制御機序” を筋電位測定等を駆使して明らかにする手順と実際に得られた結果を説明します。サイバネティックス講演討論會の最後を飾るに相応しい内容です。最終節、「§10. サイバネティックスと運動の自動制御」では、

生体内の自動制御機序と機械的フィードバックの間には対応関係があるものの、複雑さの程度が異なっていて、今後も生体の自己制御のカラクリの理解に関心をもって頂きたいということです。最後に、寺田寅彦の「百足の足を驚嘆しながら萬年筆を操っている」という言葉を引用して話しを締めています。

討論は、工学者/物理学者からさまざまな “問い合わせ” があり、それに対して微に入り細に入り、時實が答えていくという息もつかせぬ展開で読みごたえがあります。高橋安人は蝿のように敏捷な運動をする人間の手足を機械的に作るという “夢の現実性” を問うています。数年後、高橋安人は米国のサーボ技術を日本の工業界に伝え、“富士通ファナックの稲葉天皇” こと、稲葉清右衛門が数値制御工作機械やロボット制御装置の開発をリード、2000年代にはまさに蝿の羽根ように敏捷に動き、目視困難な運動速度のロボットハンドが各工場で稼働しはじめています。討論は尽きないようでしたが、残念ながら、座長の「時間も大變遅くなりましたのでこれで打ち切らせていただきます」で散会となりました。

時實利彥「筋運動支配の自動制御機序について」目次

インターネットで読める(再記)

北川敏男編『續サイバネティックス : 自動制御と通信理論』、みすず書房現代科學叢書 11(1954/8)、pp.159

5-2 時実利彦『人間のからくり』

時実は様々な要望に応えて、脳と人間に関する一般書を多数、書いています。ここでは、

時実利彦『人間のからくり』、毎日新聞社(1959)、pp.300

を紹介しておきましょう。これ以外にも、『人間とは何か:脳のはたらきを通して』、通信教育振興会(1968)、『脳を考える』、日本経済新聞社(1972)、『脳を育てる』、三笠書房(1985)などがあり、これらは国立国会図書館の個人送信サービスで読むことができます。

インターネットで読める

時実利彦『人間のからくり』、毎日新聞社(1959)

6.書斎の本棚/図書館の書棚から

このコーナーでは、本文に登場した本、関連書籍をさらに紹介します。

6-1 ミチオ・カク『2100年の科学ライフ』

ミチオ・カク(1947-)は弦理論をリードする日系3世の理論物理学者です。米ディスカバリーチャンネルで一般向け科学番組にTV出演する有名人。『超弦理論とM理論』といった専門書から、『サイエンス・インポッシブル』、『フューチャー・オブ・マインド』などの一般書も多数手がけています。特徴的な歯切れのよい短文が持ち味で、深い洞察の末に到達した単純明快な日常用語で抽象的な概念をさらりと説明します。本書、

ミチオ・カク『2100年の科学ライフ』、NHK出版(2012)、pp.471+7

の原著は2011年に出版されたもので、8項目の話題のそれぞれについて、近未来(現在から2030年まで)、世紀の半ば(2030年から2070年まで)、遠い未来(2070年から2100年まで)の姿を語ります。2章の「人工知能の未来」では意識の三基本要素として、

  • 環境を感知し認識する
  • 自己認識する
  • 未来をシミュレートし戦略を練る

を挙げています。金槌は環境を感知しないので0ランク、サーモスタットはフィードバック機構をひとつものので1ランクという具合です。そして、ロボットが人間を超える「シンギュラリティ」が議論されます。シンギュラリティ(特異点、特異性)という言葉は、ルネ・トムのカタストロフィー理論に現れるシンギュラリティとは別の使い方で、ブラックホールの事象の地平線、つまりそれを超えたら後戻りできない地点を意味することが明記されています。レイ・カーツワイルはこの手の予言を趣味とする研究者という位置づけです。では、ミチオ・カク自身は何を語るのか?

ミチオ・カク『2100年の科学ライフ』目次

6-2 竹内 淳『高校数学でわかるボルツマンの原理』

熱力学から統計力学までの広範囲な話題をコンパクトにまとめた一般解説書です。しかし、高校数学でわかるという謳い文句とは裏腹に、無限区間にわたる定積分や3重積分などで埋め尽くされるページもありんます。明らかに、教科書とは違う語り口ですが。

竹内 淳『高校数学でわかるボルツマンの原理: 熱力学と統計力学を理解しよう』、講談社ブルーバックス(2008)、pp.224

6-3 ミゲル・ニコレリス『越境する脳』

ミゲル・ニコレリス(1961-)は猿の脳に埋め込んだ電極から猿の意図を検出し、ロボットハンドの伸縮やハンドリングを成功させたブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の先駆者。その後、二匹のネズミの脳をネットワーク結合するブレイン・ブレイン・インターフェースの研究を展開している。「テレパシー」ってヤツですね。BMIはイーロン・マスクの参入でブレーク中ですが、自動運転車に比べて到達レベルを操作できるので見込みがあると思われます。本書は、専門家向けの技術書ではなく、一般向けの解説書で、豊富な実体験をもとに面白く読むことができます。

ミゲル・ニコレリス『越境する脳: ブレイン・マシン・インターフェースの最前線』、早川書房(2011)、pp.434

6-4 山本義隆『熱学思想の史的展開』

ウィーナーのサイバネティックスを理解するうえで、19世紀末の物理学者、ジョサイア・ウィラード・ギブズ(1839-1903)の世界観の理解が欠かせないわけですが、ギブズといえば、熱力学・古典的な統計力学の完成者であって難解な論文を書いた研究者、具体的には熱力学の第1法則(エネルギー保存則)をエントロピーの表式で書き換えた人という程度の理解で済ませていていました。どういう人物だったのかまで立ち入って調べたことはなく、せいぜい、バナール『歴史における科学』の記述を追う程度(バナールはギブズをほとんど評価していない)。そんなとき、ついにこれに目を通すときがきた、と感じて手に取ったのが、

山本義隆『熱学思想の史的展開(1)〜(3)』、ちくま学芸文庫(2009)

です。その昔、現代数学社の単行本版(1987)は600ページを超える大作で、しかも、熱素(カロリック)あたりから始まって熱運動論の古典統計力学までの話しだけでこの分量ですから、畏れ多い限りだったのです。それが、ちくま学芸文庫版では3冊に分割されて、机上で姿勢を正して読む必要もなく、手軽に読めるようになりました。逐一、原典に当たって書いています。昔の論文は雰囲気も用語法も違いますから、相当、苦労したのではないかと思います。量子統計にまで手を伸ばしたかったが力尽きた、とのことです。ギブズの登場は第3巻です。

6-4.1 山本義隆『熱学思想の史的展開(1)』、ちくま学芸文庫(2009)

山本義隆『熱学思想の史的展開(1)』目次

第1部 物質理論と力学的還元主義
第1章 機械論的自然観と熱 : ガリレオをめぐって
第2章「粒子哲学」と熱運動論の提唱 : ボイルをめぐって
第3章「ボイルの法則」をめぐって : ボイル、フック、ニュートン
第4章 引力・床力パラダイムの形成 : ニュートンとヘールズ
第5章 一元的物質観の終焉 : デザギュリエ
第6章 能動的作用因としての<エーテル> : もう一人のニュートン

第2部 熱素説の形成
第7章 不可流体と保存則 : ブールハーベとフランクリン
第8章 スコットランド学派の形成 : マクローリン、ヒューム、カント
第9章 熱容量と熱量概念の成立 : カレンとブラック(その1)
第10章 潜熱概念と熱量保存則 : カレンとブラック(その2)
第11章 熱物質論の形成と分岐 : ブラック、クレグホン、アーヴィン
第12章 熱素理論と燃焼理論 : 初期ラボアジェ

6-4.2 山本義隆『熱学思想の史的展開(2)』、ちくま学芸文庫(2009)

山本義隆『熱学思想の史的展開(2)』目次

第3部 熱量学と熱量保存則
第13章 熱量学の原理の提唱 : ラプラスとラボアジェ
第14章 気体の熱膨張と温度概念批判 : ラプラス、ゲイ=リュサック、ドルトン
第15章 断熱変化と気体比熱をめぐって : 《比熱変化論》と《比熱・潜熱理論》
第16章 解析的熱量学の完成 : ラプラスとポアソン
第17章「熱運動論」は何ゆえに非力であったのか :「ラムフォード神話」をめぐって

第4部 熱の動カ —— カルノーとジュール
第18章 新しい問題の設定一熱の「動力」 : カルノーとワット
第19章 理想的熱機関の理論 : カルノーの定理
第20章 カルノー理論の構造と外延 : 熱力学の第1ページ
第21章 間奏曲一熱波動論の形成と限界 : ヤング、ピューエル、カルノー
第22章 く力>の保存と熱の仕事当量 : ローベルト・マイヤー
第23章 熱と仕事の普遍的互換性の証明 : ジェームス・プレスコット・ジュール
第24章 熱の特殊性とエネルギー変換の普遍性 : ウィリアム・トムソンのジレンマ

6-4.3 山本義隆『熱学思想の史的展開(3)』、ちくま学芸文庫(2009)

山本義隆『熱学思想の史的展開(3)』目次

第5部 熱力学の原理の提唱
第25章 熱の普遍性の原理 —— 熱力学第1法則の確立 : クラウジウスの50年論文(その1)
第26章 熱の特殊性の原理 —— 熱力学第2法則の提唱 : クラウジウスの50年論文(その2)
第27章 カルノー関数と絶対温度をめぐって : ウィリアム・トムソンの問題意識
第28章 ジュールートムソン効果と絶対温度の定義 : トムソン:1852-54年
第29章 熱力学第2法則の数学的表現 : トムソンとクラウジウス:1854年

第6部 エネルギーとエントロピー
第30章 第2法則からエントロピーへ : クラウジウスの模索
第31章 熱力学の体系化にむけて : 利用可能なエネルギーと平衡条件
第32章 自由エネルギーと熱学の体系 : ヨシア・ウイラード・ギブズ
第33章 ネルンストの定理と熱力学第3法則 : ネルンストとプランク
第34章 熱学と熱的地球像 : 熱学が意図してきたもの

注/参考文献/あとがき/人名索引

6-5 鈴木 炎『エントロピーをめぐる冒険』

講談社ブルーバックスには、10冊を超えるエントロピー関連の書籍がありますが、

鈴木炎『エントロピーをめぐる冒険 : 初心者のための統計熱力学』、講談社ブルーバックス(2014)

は歴史的な経緯を辿りながら書かれていることもあって、その全体像を把握するためには格好の入門書です。サイバネティックスと関係が深いギブズの話題が豊富です。

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